「逆流性食道炎」ってどんな病気?
■逆流性食道炎とは、胃酸が逆流することが原因で起こる病気です

胃酸を含む胃の内容物が食道に逆流することにより、食道の粘膜に炎症がおきた状態を「逆流性食道炎」といいます。
胃には胃酸に対する防御機能がありますが、食道にはその機能が備わっておらず、酸に繰り返しさらされると炎症を起こし、粘膜がただれたり潰瘍が生じます。その結果、胸やけや呑酸(どんさん:酸っぱい液体が口まで上がってきてゲップが出る)などの不快な症状が起こります。また、喉の違和感や長引く咳、睡眠障害などの食道外症状や、まれに中耳炎の原因になることもあります。

逆流性食道炎は1990年頃から患者数の増加がみられ、主な原因としては食生活をはじめとする生活習慣の欧米化と、ピロリ菌感染者の減少があげられます。欧米的な食生活をしていると胃酸の分泌は増加しますし、ピロリ菌に感染していない胃では胃酸の分泌が増加しています。
日本では逆流性食道炎は高齢者(特に女性)に多い疾患ですが、最近では若い患者さんも増加しています。
* ピロリ菌の除菌治療と逆流性食道炎の関係は?
ピロリ菌感染のある胃潰瘍・十二指腸潰瘍では、除菌治療を行います。
ピロリ菌を除菌すると胃酸の分泌が改善し、5〜10%の人が逆流性食道炎になりますが、ほとんどの場合は軽症です。
■逆流性食道炎になりやすい人は?
@食べ過ぎ、早食い
A高脂肪食、アルコール、喫煙
B食べてすぐ寝る
C前かがみ姿勢が多い、腹部を締めつけすぎる服装
D肥満
など
■逆流性食道炎のお薬は?
逆流性食道炎の薬として最も効果が高く、よく使用されるのは、胃酸の分泌を抑える薬です。食道に逆流する胃酸の量を少なくすることによって、逆流性食道炎の症状や炎症を改善します。ほかに、粘膜を保護する薬や胃酸を中和する薬を使用する事もあります。
<酸分泌抑制剤> 逆流性食道炎の治療で最も代表的な薬です。

一部の薬は薬局でも購入することができます。しかし、医師が処方する薬とは成分の含有量が違うものもあり、効果は異なります。市販薬については3日間飲んでも症状が良くならない場合には、医師または薬剤師に相談してください。
<粘膜保護剤> 食道の粘膜を覆って、逆流してきた胃液から食道を保護します。
<制酸剤> 胃で分泌された胃酸や、食道に逆流してきた胃酸を中和します。
食道の炎症が軽く、症状がたまにしか起こらない方には、症状がある時だけ服薬する治療が行われることがありますが、食道に糜爛(びらん:粘膜の表皮が欠損した状態)や潰瘍(真皮・皮下組織まで欠損した状態)ができている方は、症状がなくなった後も、糜爛や潰瘍が治るまで薬を飲み続ける必要があります。糜爛や潰瘍が完全に治った後は、薬をやめても再発しない人がいる一方で、再発を繰り返す人もいます。
再発を繰り返す人には、薬を飲み続けることで再発を予防する治療(維持療法)が勧められます。現在、使われている薬では、胃酸の逆流を根本から治すことはできず、また、生活習慣の改善に努めても、逆流の原因を完全に除くことは難しいためです。この場合は、長い期間薬を飲み続ける必要がありますが、再びつらい症状で苦しまないためにも、主治医とよく相談し、治療を続けていきましょう。
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